去年の夏

 

すべてを捨て自転車を漕いで漕いであの人のもとへ。

 

がらんとした駅はわたしにはきらきらして見えました。

 

花火の広告を見たような気がします。

 

 

花火、見たいなあ

 

 

と思いました。

 

そして世界一の幸せもんみたいな顔をして、座席のいちばん端に座ってソワソワしました。

 

 

 

 

 

 

と。

 

 

 

しあわせ、というのは安い言葉です

 

どこにでもある、安い安い言葉

 

 

 

 

今年の夏はもうおしまい。

 

 

簡単なものを見つけられませんでした。

 

 

 

 

ポインセチアは元気ですよ。

明日はお休みだからゆっくり話せるかな。

 

 

ポインセチアはとても優しくて

わたしと同じくらい寂しがりやだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わからなくなりました。

わからなくなりました。

きのうは泣きました。

喉の奥が重くてゴロゴロして

声がキューキューとなって

猫のように鳴きました。

真っ暗な黒が少し青みがかってきたのでわたしは布団を被り目を瞑りました。

わかりませんでした。

わかりませんでした。

目をパチクリさせて歯を磨きます。

いつものコンビニでハムとチーズのパンを買って、大好きな東急東横線に揺られてとなりの駅で乗り換えます。

それでもちっともわからないのです。

わたしの頭の中ではポインセチアが話します。

ここ三日間くらい、ずっと。

真っ赤な観葉植物ポインセチア

メリークリスマス。

ああ、いかなきゃ。

いかなきゃ。